プロジェクト詳細

意見公募中
JBC00000476
瀬戸内町ネリヤカナヤの海協議会in奄美大島

瀬戸内漁業協同組合

鹿児島県瀬戸内町

瀬戸内町ネリヤカナヤの海推進協議会

自然基盤
吸収源の新たな創出
1.プロジェクトの申請者、実施者、関係者 1-1 申請者 瀬戸内漁業協同組合(以下、当漁協) 鹿児島県瀬戸内町 瀬戸内町ネリヤカナヤの海協議会(以下、当協議会) 1-2 実施者 (1)当漁協 鹿児島県瀬戸内町の漁業者の協同組合組織。漁業権の管理や水産物の流通のみならず、瀬戸内町と連携した漁業経営の基盤である海洋環境の保全に積極的に取り組んでおり、今回J-ブルークレジットとして申請する仕切り網等による藻場(ガラモ場)の再生・保全およびマングローブ植栽の主体。 (2)鹿児島県瀬戸内町 鹿児島県と密接に連携しており、藻場造成やマングローブにかかる技術的指導やマングローブの種採取等、地元学校への環境教育の場の提供などの調整を実施。また、取り組みの対外発信として、環境省“自然共生サイト”認定の支援を実施。 (3)当協議会 当協議会は当漁協およびその組合員がコアなメンバーとなっており、代表理事組合長が協議会会長を務める、町内外の企業、瀬戸内町、アカデミアとの連携を推進する枠組み。藻場の回復・保全のための基盤構築(投石・藻礁)や、食害をもたらす植食性魚類の侵入を防ぐ仕切り網・囲い網の設置・管理等、クレジットの直接的な裏付けとなる活動を当漁協・瀬戸内町・当協議会が中心となって実施している。 (4)当協議会メンバー(地元企業等)および地元学校 マングローブ植栽や藻場・生物調査への参加等を通じて、当漁協・組合員と連携し、環境教育・地域貢献の機会という位置づけをもちながら、活動に貢献している。 (5)関係機関(技術連携) 鹿児島県水産技術開発センターは、仕切り網方式によるガラモ場の効率的な形成・拡大手法の技術開発および現地試験・調査を主導。国立研究開発法人水産研究・教育機構が代表機関として受託した農林水産省・農林水産技術会議委託プロジェクト研究「ブルーカーボンの評価手法及び効率的藻場形成・拡大技術の開発」(JPJ008722)の枠組みも活用し、科学的根拠に基づく藻場再生を進めている。 2.プロジェクト開始時の状況 プロジェクトの実施地である瀬戸内町は亜熱帯の奄美大島の最南端に位置し、加計呂麻島を挟んで海峡を有する港町があり、沿岸部はリアス式海岸とサンゴ礁、ホンダワラ類等による藻場が形成され豊富な海洋生物が生息している。また、町内の小名瀬地区の干潟ではメヒルギ個体群が存在しており、マングローブの生態系が形成され生物多様性を育んでいる。 しかし、近年では、ホンダワラ類の顕著な減少や南方由来の魚類とウニ類の増加による食害である「磯焼け」や、オニヒトデによるサンゴ礁への食害等といった、町の漁業や文化を支えてきた自然基盤の劣化が深刻化していた。特に藻場については、ブダイ・アイゴ・イスズミ等の植食性魚類による食害の影響が大きく、白浜地先の転石域のように本来は藻場が形成され得る場所でも藻場が失われている状況が見られた。当漁協は、町と連携した「瀬戸内町ブルーカーボンプロジェクト(https://www.town.setouchi.lg.jp/suisan/bluecarbon_project.html)」として、オニヒトデの駆除や藻場保護のための仕切り網・囲い網の設置、藻礁の設置、マングローブの植栽等の対策に取り組んできた。 3.プロジェクトの立ち上げ理由 先述したような自然基盤の劣化が深刻かつ急速に進む中で、効果的かつスピード感をもって対策を講じていくための資金やノウハウの導入に加えて、次世代への取組継承の観点から、企業やアカデミア、子供たちを含む地域住民も含めた幅広いステークホルダーとの連携が不可欠と判断。そのための連携枠組みとして、当協議会を2024年に設立し、プロジェクトをさらに加速させている。 3-1 藻場(ガラモ場)の再生・保全 磯焼けにより消失した藻場の再生は、当協議会が掲げる目的の中核である。藻場の衰退要因である植食性魚類の食害に対し、鹿児島県水産技術開発センターと連携し、海岸地形(砂地・転石域・急深)の効果と組み合わせた「仕切り網方式」を開発・実証してきた。転石域を含む浅い海域を仕切り網で外海と遮断することで植食性魚類の侵入を抑制し、藻礁(投石・階段式藻礁・プレート礁)とあわせて藻場(マジリモクを主体とするガラモ場)の形成・拡大を図るものである。本手法は低コストかつ漁業者自らが実施可能で、他地区への展開性も高い。 3-2 マングローブの新たな造成・保全 マングローブの造成について、人の手による既往の干潟の改変でもあるが、以下の点を踏まえ、干潟とマングローブを組み合わせた生態系の構築・維持が重要と認識。専門家の指導を得ながら取組みを進めている。 ・炭素吸収・固定能力の優位性(気候変動対応):マングローブは単位面積あたりの炭素吸収・固定が干潟よりも優位とされており、目的として掲げる気候変動対策に資する生態系である。 ・生物多様性の拡張:干潟(底生生物・渡り鳥等)とマングローブ(魚類・甲殻類・貝類等の保育・生息)を組み合わせた生態系により、生態系保全(生物多様性)を増進。認定されている「自然共生サイト」のコンセプトや「ネイチャーポジティブ」の文脈にも合致。 ・防災・気候変動レジリエンス:マングローブは根系による波浪・高潮・津波の減衰効果が大きいとされ、年々深刻化する台風等の異常気象による被害を軽減するソリューションにもなりうる(干潟単独では波浪減衰効果は限定的)。沿岸住民や社会インフラの保護機能として優位。 ・社会・経済的便益(追加的な優位性):エコツーリズム、環境教育資源、漁場(養殖場)への栄養分供給など、地域経済への寄与を期待。加えて、北限の北上が予想されるマングローブにかかるノウハウ・知見の蓄積にも資する。 4.プロジェクトの活動内容の説明 4-1 藻場(ガラモ場)の再生・保全 ― 仕切り網・藻礁による食害防除 ・実施場所と手法:瀬戸内町白浜地先を主たる試験・実施地とする。同地先は、岸から沖側約30mが水深3〜4mの砂浜で、その沖が急深(水深約15m)となり、砂浜の岸寄りに手のひら大の転石域を有する地形である。この地形を活かし、海岸と垂直に2枚の仕切り網(網間約60m)を設置して浅い海域を両側の海域と遮断し、ブダイ・アイゴ・イスズミ等の植食性魚類による食害を防除する。 ・使用資材:仕切り網はPE無結節網(440T、目合い37.5mm、いわゆる防球ネット)を用い、高さ3m×長さ24mに加え、岸側に高さ2m×長さ5〜10mを継ぎ足して設置。上部に浮力595gのABS製フロートを約1〜1.5m間隔で取り付け、下部を土嚢で固定。あわせて投石・階段式藻礁・プレート礁を基盤として設置している。 ・成果(藻場の形成・拡大):2019(令和元)年度以降、仕切り網内で継続的に藻場(マジリモク主体)の形成が確認され、5年以上にわたり藻場が維持・拡大している。ドローン空撮と潜水目視・坪刈調査により網内の藻場分布面積を毎年把握しており、2026年3月(R8.3)には1,177.55m²に達している。 ・効果の実証(対照区比較・追加性):各年、仕切り網内(試験区)と網外(対照区・従来の場所)で坪刈調査(50cm×50cm)を行い、網内の藻場現存量が網外を大きく上回ることを確認している。これにより、藻場の形成が自然現象ではなく仕切り網・藻礁による活動の成果であること(追加性)を裏付けている。 ・調査・モニタリング:藻場分布面積のドローン計測、坪刈による現存量測定、トレイルカメラによる食害魚類の確認、水温の連続観測等を継続的に実施。マジリモクの繁茂期(春季)に合わせて調査を行っている。 ・技術連携と展開:本手法は鹿児島県水産技術開発センターとの連携により開発・実証され、水産研究・教育機構の委託プロジェクト研究(JPJ008722)の枠組みも活用。宇検村佐念・南さつま市笠沙等の他地区でも試験を行い、「砂地・岸寄りの転石・急深地点まで遮断・対岸が遠い」等の適地条件を整理している。 4-2 マングローブの新たな造成・保全 ・マングローブ幼苗の植栽:地元学校や企業と連携し、2022年から累計790本の苗を小名瀬地域の干潟に植栽。なお、既存の干潟をすべてマングローブ生態系に改変することは企図していない。専門家の指導を得ながら、炭素吸収・固定、減災・防災、生物多様性の増進等の目的を達成する範囲で取組みを進める。 ・植栽場所の環境モニタリング・生物調査:植栽に伴い、生物多様性への影響がないか環境調査を実施。 4-3 ステークホルダーの巻き込み ・地元学校(小中)・企業による植栽・観察体験の機会提供:プロジェクト開始以降、2025年度までに累計実施回数15回、参加者200名以上。 ・企業からの資金動員:企業版ふるさと納税を活用し、町外企業からの資金を動員し、プロジェクトを促進。 ・多様なチャネルでの情報発信:自然再生・高校生サミットでの地元古仁屋高校の発表(2024年10月、2025年10月)、環境省自然共生サイト認定(2024年10月)、日本テレビ系「ウミコイ」#58での特集(2024年12月)、奄美大島内の自然共生サイト認定サイトと合同での生物多様性保全の勉強会(2025年度)等を通じ、藻場・ブルーカーボンの普及啓発を実施。 5.申請プロジェクトがCO₂吸収源の回復や拡大も目的としていることの説明 本プロジェクトを申請する当協議会は、設置の目的を「地球温暖化や海洋環境の変化による『磯焼け』で消失した藻場の再生及びブルーカーボンの創出を通じて、カーボンニュートラル、ネイチャーポジティブ、地域振興に寄与するとともに、水産資源の維持・保全、持続可能な水産業を実現すること」と定めている。本プロジェクトは、藻場(ガラモ場)とマングローブのCO₂吸収源としての機能に着目しつつ、サンゴ礁を含む生態系の回復によって気候変動の緩和・適応、生物多様性保全、地域振興等の複合的価値(コベネフィット)を創出するものである。 CO₂吸収量の算定:藻場については、ドローン空撮および潜水調査により把握した仕切り網内の藻場分布面積(被度調査による実勢面積、添付資料2-13)に、坪刈調査(50cm×50cm)で得た網内(活動区)の単位面積あたりの現存量(湿重量)を組み合わせ、Jブルークレジット認証申請の手引き(Ver.2.6)の式2により算定する。すなわち、分布面積×単位面積あたり湿重量×(1−含水率)×P/B比×炭素含有率×44/12×(残存率①+②)×生態系全体への変換係数を用い、各係数はマジリモク(ホンダワラ類)の文献値・手引き採用値を採用する。対照区(網外)は植食性魚類の食害等により藻場がほぼ成立せず、無活動時のベースラインは実質ゼロであることから、網外の控除は行わず、ベースラインは別紙「ベースライン計算シート」で0として算定する(二重控除を避けるため)。複数年度にわたり藻場の形成・維持を確認しており、坪刈を実施していない年度は直近3年の平均湿重量を用いて補完したうえで、過去に遡った複数年度分をまとめて申請する。本手法により、申請対象とするR3〜R7年度(5年分)の藻場由来CO₂吸収量は合計約0.53t-CO₂と算定される。なお、モニタリング調査に漁船を使用しないため、船舶由来CO₂の控除は生じない。マングローブについては、植栽木の計測に基づき単年度の吸収量を算定する。(詳細は添付資料「CO₂吸収量算定表」による。)
2021年7月〜現在