プロジェクト詳細

意見公募中
JBC00000472
ナマコ煌めくアマモの里海〜陸奥湾川内町の海を守り育てるプロジェクト

川内町漁業協同組合

むつ市

志田内海株式会社

日本電気株式会社

八戸工業大学

自然基盤
吸収源の回復、維持、劣化抑制
・プロジェクト開始前の状況(陸奥湾のアマモ場とナマコ漁業) 国内で5番目に広い閉鎖性海域である陸奥湾は,砂泥質の底質が卓越し,アマモやスゲアマモを構成種とするアマモ場が形成されている。両種によるアマモ場の面積は,1990年に環境省が実施した調査では,国内のアマモ場の13.9%に相当する6,862 haであった。 しかし,1999年から2000年にかけて,青森県の水産研究機関である増養殖研究所が,陸奥湾の水深2.5 m,5 m,10 m地点に潜水し,海藻・海草類の現存量を調査した「藻場・水産資源マップ調査」の結果,陸奥湾のアマモ場面積は4,847 haと見積もられた。このことから,1990年からの10年間で,アマモ場の面積が約3割減少した可能性が示唆された。 陸奥湾におけるアマモ場の衰退要因としては,港湾,漁港等の海岸施設の設置や埋立てに伴う物理的な消失,構造物の設置に伴う海水流動や底質の変化,青函航路に就航したウォータージェット式高速フェリーによる海底の撹乱,及びホタテガイやマナマコを対象とする桁曳漁業によるアマモ類の根茎部の剥離・損傷などが挙げられる。 陸奥湾では,アマモ群落内にマナマコが特に高密度に生息するため,アマモ場がナマコ桁曳漁場として利用されている地域があり,操業時にアマモ群落が破壊・損傷されることがある。なお,陸奥湾のナマコは,1990年代後半から中国におけるナマコ需要の拡大に伴って価格が高騰し,漁獲量が急増した。その結果,2004年には漁獲量が1,600 t,漁獲金額が34億円に達した。 ・プロジェクトの立ち上げ理由 本申請の代表者である川内町漁業協同組合では,漁業者の経営安定化を目的として,1997年からマナマコの生産拡大に取り組み,1998年には青森県内の漁業協同組合の中でナマコ生産量第1位となった。 さらに,ナマコの付加価値向上を目的として,青森県水産物加工研究所(現、地方独立行政法人青森県産業技術センター食品総合研究所)で技術研修を受け,干しナマコ(煎海鼠,いりこ)の試験生産を開始した。その後,1999年1月から本格的な生産及び中国向けの販売を開始した。 これらの取組によりナマコの生産額は増加したものの,次第に30 cmを超える大型個体の減少や稚ナマコの発生量の低下がみられるようになり,資源状態の悪化が顕著となった。 このため,川内町漁業協同組合では,漁業収入の減少を最小限に抑えながら資源管理を進めることを目的として,1999年に「ナマコ資源有効利用推進協議会」を設立するとともに,組合青年部による沿岸漁場調査を実施した。 これらの調査及び,上記「藻場・水産資源マップ調査」として川内町地先で2000年に実施された潜水調査の結果,主要なナマコ桁曳漁場となっている黒崎地先(戸沢地区)などではアマモの生育量が少なく,広範なアマモ場はほとんど認められなかった。 ・プロジェクト開始後の活動内容 1 アマモ場の保全 (1)川内町漁業協同組合による桁曳禁漁区の設定 ナマコ資源有効利用推進協議会は,沿岸漁場調査の結果を踏まえ,従来,沿岸全域で行われていたナマコ桁曳漁業について,距岸500 m以内を禁漁区域とすることを決定した。さらに,ナマコ桁曳漁場を第1次から第3次までの3区域に区分し,各漁期に操業可能な区域を指定する輪採制を導入した。その後,第2次漁場を沖側と岸側に分割し,沖側を第4次漁場として設定することで,漁場を4区域に細分化し,資源及び漁場の管理を強化した。 さらに,川内町漁業協同組合では,ナマコ利用の推進と併せて資源管理の徹底を図るため,2006年に潜水士船「かわうち丸」を導入し,ダイバーを組合職員として雇用して,組合自営によるナマコ潜水漁業を開始した。この際,黒崎地先(戸沢地区)に新たに潜水漁業専用漁場を設定した。この潜水漁業専用漁場は,従前の輪採制の漁場とは別海域に距岸500m以上離れた海域も含めて設定されており,桁曳操業が全面的に禁止された(以下,「桁曳禁漁区」という。)。黒崎地先(戸沢地区)では,2014年に移植放流用の幼ナマコを採取するため,一時的に桁曳漁業が実施されたが,この際も桁曳禁漁区ではナマコ採取操業を一切行わず,ナマコ資源の保護とアマモ場の保全を徹底した。 これらの資源管理及び漁場保全の取組の結果,次第に桁曳禁漁区にアマモ場が形成されるようになった。青森県が2009年に,2000年の「藻場・水産資源マップ調査」と同じ地点で実施した底生生物の現存量調査では,桁曳禁漁区にスゲアマモの小群落が認められるようになった。さらに現在では,組合職員のダイバーが「アマモジャングル」と呼ぶほどの高密度なアマモ群落が形成されている。 (2)ナマコ・アマモ増殖礁設置漁場の管理と保護区の設定 青森県は,本申請者の一員でもある志田内海株式会社が開発したナマコ・アマモ増殖礁を,2014年から陸奥湾に設置している。この礁体は,天板に開口部を有するドーム型であるため,桁曳漁業によってもアマモ類の根茎部を損傷することなく,開口部からアマモ類の播種・移植が可能である。青森県は,川内町地先の2箇所に,本礁体を用いたナマコ・アマモ増殖場を造成している。川内町漁業協同組合では,ナマコ資源の保護とアマモ場の保全を目的として,増殖場における桁曳操業を制限している。 2 植樹活動 1988年前後から,宮城県のカキ養殖漁業者によって山への植樹運動が取り組まれるようになった。むつ市川内町においても,2018年から川内町漁業協同組合が中心となり,むつ市,下北森林管理署,青森県下北農林水産事務所,下北地方森林組合と連携し,「豊かな海は豊かな森から育まれる」という理念のもと,水源林の保全,陸奥湾の環境保全,川内町沿岸における養殖ホタテやナマコ資源の育成を目的として,毎年5月頃に「漁師の森」づくり活動を実施している。 3 海岸環境保全活動 川内町漁業協同組合では,毎年6月頃に,青年部に所属する漁業者が海岸清掃を実施している。空き缶,ペットボトル,廃プラスチックなどの回収したごみは,組合が配布した有料ごみ袋に入れ,市の廃棄物処理場で焼却処分している。 4 海の環境教育活動 ① むつ市海と森ふれあい体験館による環境教育 NPO法人シェルフォレスト川内では,むつ市が海水浴場「川内マリンビーチ」の隣接地に開設した「むつ市海と森ふれあい体験館」を拠点として,アマモの展示や観察会,子どもたちを対象としたアマモの勉強会,アマモの紙すき体験など,さまざまなイベントを開催し,実践的な海洋環境教育を行っている。 ② 後継者育成の取り組み 川内町漁業協同組合では,青年部に所属する漁業者が中心となり,漁業後継者の育成を目的として,「ユメココ教室」など,小学生を対象とした学習会を開催するとともに,講師の派遣を行っている。 ・申請プロジェクトがCO₂吸収源の回復や拡大も目的としていることの説明 漁業者は,川内町漁業協同組合が設定した桁曳漁業の禁漁措置を遵守しており,禁漁区に形成されたアマモ場の回復・拡大を通じて,アマモによるCO₂吸収と炭素の海洋生態系への貯留・固定が促進され,炭素が長期間にわたって大気から隔離されることを期待している。 また,漁業者は,海岸清掃,海洋環境教育,植樹活動にも主体的に取り組んでいる。これらの活動を通じて海域及び沿岸域の環境が保全されることで,アマモ場の維持・拡大が促進され,結果としてCO₂吸収源の回復・拡大にもつながることが期待される。 なお,川内町漁業協同組合の組合員は,多くがホタテガイ養殖に従事しており,海水温の上昇による養殖ホタテガイの斃死や成長不良など甚大な漁業被害を受けており,気候変動対策に強い関心を持って各活動に取り組んでいる。
1999年から現在