プロジェクト詳細

意見公募中
JBC00000431
最果ての小さな漁村の大きな挑戦〜下北半島佐井村藻場再生プロジェクト〜

佐井村

佐井村漁業協同組合

志田内海株式会社

八戸工業大学

自然基盤
人工基盤
吸収源の新たな創出
吸収源の回復、維持、劣化抑制
水産養殖を含む
プロジェクト開始前の状況 ① 佐井村漁業協同組合による漁場管理 青森県下北半島の津軽海峡に面した佐井村では,古くからコウナゴ漁,コンブ,ワカメ,エゴノリ,モズクなどを対象とする採藻漁業,アワビ,ウニなどを対象とする採介漁業,ヒラメ,マダラ,メバルなどを対象とする漁船漁業が行われてきた。しかし,主力であったコウナゴ漁は,1978年(昭和53年)以降,極端な不振が続くようになり,これに伴い,磯根漁業への依存度が高まった。 磯根漁業への依存度の高まりを受けて,佐井村漁業協同組合では,磯根漁業生産の増大を目的として,1979年(昭和54年)にアワビ稚貝中間育成施設を整備した。また,組合は,1988年度(昭和63年度)に青森県が海岸の平盤を掘削して造成したアワビ大規模増殖場を管理し,人工種苗の放流によるアワビ増殖事業に取り組むようになった。 この増殖場のほか,佐井村漁港区域内などには,佐井村漁業協同組合が独自に管理する漁場が設定されている。これらの組合管理漁場では,自営事業としてウニの移植・放流や採捕などが行われ,組合によってウニの生息密度の管理が実施されている。 ② 磯焼けの発生 下北半島沿岸では,天保年間(1830年代)を初めとして,しばしば磯焼けの発生が記録されている。磯焼けは,浅海の岩礁域及び転石域において,海藻群落が季節的消長や通常の経年変化の範囲を超えて著しく衰退又は消失し,貧植生状態となる現象と定義され,長期間にわたり持続することもある。佐井村沿岸では,1922~1923年(大正11~12年)及び1943~1965年(昭和18~40年)に磯焼けの発生が報告されている。また,1990年に発生した磯焼けは,現在まで佐井村沿岸の広範な海域で継続している。 佐井村沿岸の磯焼けは,コンブ,ワカメなどの海藻生産の減少・低迷,アワビの成長不良,ウニの身入り低下など,村の漁業生産に深刻な影響を及ぼしている。一例として,佐井村のコンブ漁獲量は,1965~1989年には72.0~1,485.6 tの範囲で推移し,平均569.0 tであった。しかし,磯焼けが発生した1990年には2.4 tに急減し,翌1991年も0.60 tと,2年連続で極端な不漁となった。その後も磯焼けが継続したことから,1990~2025年のコンブ漁獲量は平均75.2 tにとどまり,磯焼け発生前の平均値の13.2%に低下している。このため,磯焼け対策,すなわち,磯焼け海域におけるマコンブ群落の回復が,佐井村における喫緊の課題となっていた。 ③ ワカメ養殖 昭和18年から40年にかけて磯焼けが発生していた佐井村では,海藻生産の安定・増大を図るため,昭和40年代に,漁業研究会に所属する若手漁業者を中心としてワカメ養殖に取り組むようになった。養殖技術の確立の目途が立ったことから,1987年(昭和62年)には村の補助金により養殖施設が整備され,翌1988年(昭和63年)には,青森県の統計に27,346 kg,1,121千円の養殖ワカメ生産が記録されている。その後,養殖ワカメの生産量はさらに増加し,1993年(平成5年)には88,600 kg,6,936千円に達した。 また,アワビ稚貝中間育成施設では,ワカメ種苗の生産も行われるようになり,佐井村漁業協同組合が漁業者に養殖用種苗を配布するなど,地域におけるワカメ養殖の普及に寄与した。 プロジェクトの立ち上げ理由 佐井村において磯焼けが拡大・持続していることから,青森県が佐井村沿岸の磯焼け海域を調査した。その結果,佐井村沿岸の磯焼けは,キタムラサキウニの摂餌によるマコンブ幼胞子体の食害によって持続されていることわかった。 佐井村沿岸では,上記のとおり,佐井村漁業協同組合によってアワビやウニの資源増殖,ワカメ養殖や漁場管理が行われてきた。しかし,1990年以降の磯焼けによりコンブ場が衰退し,一部地先では消失したことから,漁業生産の基盤となるコンブ場の回復を図ることを主要な目的の一つとして,本プロジェクトを立ち上げることとした。 プロジェクト開始後の活動内容 ① 磯焼け対策と漁場管理 佐井村漁業協同組合は,青森県と連携し,磯焼け海域において大規模なウニ除去実証試験を実施した。本プロジェクトの開始日とした1994年9月17日から10月10日にかけて,面積4.15 haの磯焼け海域から19万4千個体のキタムラサキウニを除去した。その後,1997年3月まで概ね毎月,除去区及び対照区とした除去区周辺において海藻現存量調査を実施した。その結果,除去翌年3月にはマコンブ優占群落が形成され,1996年7月には2年目マコンブによる濃密なコンブ場が形成された。 磯焼けの持続要因であるキタムラサキウニを除去することにより,マコンブ群落を回復できることが明らかとなったことを受けて,佐井村漁業協同組合では,1995年から2001年まで,毎年,1.1~2.4 haの磯焼け場から6万~16万2千個体のキタムラサキウニを除去した。これら除去区では,いずれもマコンブの優占群落が形成された。2002年以降も,組合は引き続き磯焼け場からのキタムラサキウニの除去を実施し,除去したキタムラサキウニを,ホンダワラ類,タンバノリ,ツノマタなどの多年生海藻が生育する組合管理漁場に移植・放流してきた。主な移植・放流場所として,佐井漁港区域内の防波堤に囲まれた静穏な海域や大規模増殖場など佐井村漁業協同組合の管理漁場が利用されている。佐井村の若い漁業者で組織する漁業研究会は,平成20年第47回全国青年・女性漁業者交流大会に,これらの一連の活動をまとめた「ウニの磯焼け対策から未利用資源を活かす取組」として報告し,農林水産大臣賞を受賞している。 なお,当該大規模増殖場は,青森県が平坦な岩盤を掘削して造成したもので,佐井村漁業協同組合が県からの委託で管理してきた。造成後30年を経て増殖溝の一部に砂が堆積し,スゲアマモの濃密な群落が認められるようになった。佐井村漁業協同組合では,スゲアマモ群落を損傷しないよう岩盤が露出した海底を選び,また,磯焼けにならないよう放流個体数や生息密度を管理しながらキタムラサキウニを放流・採捕している。管理漁場から採捕したキタムラサキウニは,佐井村のウニ祭りなどに供給されており,村の重要な観光資源の一つとなっている。 ② ワカメ養殖  佐井村では,原田,佐井,磯谷などの地域でワカメ養殖が行われるようになった。佐井村漁業協同組合が運営する水産加工場では,塩蔵ワカメなどの製品が製造・出荷されるようになり,ワカメは佐井村の地域特産品となった。  一方,三陸地域などとの産地間競争に加え,漁業者の高齢化や後継者不足などにより,ワカメ養殖を行う漁業者数及び収穫量は減少傾向にある。このような状況の中,佐井地区の漁業者の中には養殖組合を組織し,ワカメのオーナー制度を展開している。ワカメオーナーには,佐井村の漁業や自然環境に関心を持つ都市在住者が多く,オーナー制度を通じた交流人口の拡大と養殖ワカメの需要拡大により,佐井村における養殖生産の維持・拡大につながることが期待されている。 申請プロジェクトがCO₂吸収源の回復や拡大も目的としていることの説明  佐井村では,近年,海水温の上昇に伴い,寒冷性魚種であるシロサケ(サケ)の漁獲量が著しく減少している。サケ漁の不振は,漁業生産の低下にとどまらず,佐井村漁業協同組合が運営する水産加工場における原料不足や原料価格の高騰にもつながっている。また,海水温の上昇は,マコンブの発生量の低下や磯焼けの拡大,養殖ワカメの生長不良,スルメイカなど主要魚種の漁獲低迷など,佐井村の漁業にさまざまな影響を及ぼしている。  このような状況から,佐井村の漁業者の多くは,地球規模で進行する気候変動を身近な問題として認識しており,漁業者自らが取り組むことのできる温暖化対策として,ブルーカーボンに強い期待を寄せている。  本申請プロジェクトでは,地域の認識を踏まえ,ウニ除去によるコンブ場の回復,スゲアマモ場及びタチアマモ場の保全に取り組んだ。これらの取組はいずれも,海藻・海草の生育場を回復・拡大することにより,二酸化炭素吸収源の回復・拡大に資することを目的の一つとしている。また,藻場の回復・拡大は,二酸化炭素の吸収に加え,水産生物の涵養場の創出や資源の増大にもつながることから,気候変動対策と漁業振興を両立する取組と位置付けている。  なお,本申請の代表者である佐井村は,環境省から我が国初の脱炭素先行地域に選定された漁村として,村全体で次のような脱炭素化と地域振興の一体的な取り組みを推進している。 •海岸漂着プラスチックごみから再生した樹脂燃料、太陽光発電設備を佐井村漁業協同組合の加工場に導入し,化石燃料からの転換による低炭素化と,ノンカーボン水産品の実現を目指す取組 •本村を訪れる来訪者を対象として宿泊,食事,観光船などで「カーボン・オフセット」プランを提供し,その収益を活用して藻場再生事業を実施することで,海域における二酸化炭素吸収量の増加と漁業振興を両立する取組 •漁港への波力発電設備及び壁面太陽光発電設備の設置と,EV漁船への給電により,漁業分野における脱炭素化を実現する取組
1994年9月17日から現在