Jブルークレジット運用システム
意見公募中プロジェクト
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プロジェクト詳細
ステータス
意見公募中
プロジェクト管理番号
JBC00000326
プロジェクト名
浜名湖ワンダーレイクプロジェクト-地域と共に進めるアマモ場再生と漁業振興-
代表申請者 団体名
浜名漁業協同組合(SDGsアマモ再生事業部会)
プロジェクト区分
自然基盤
吸収源の回復、維持、劣化抑制
プロジェクト情報
浜名湖は、古来より豊かな水産資源に恵まれており、特にアサリ漁は地域を代表する基幹漁業として発展してきました。1970年代以降に統計調査が開始され、1981年には年間総水揚げ8,722トンを記録し、全国有数のアサリ漁場として広く知られていました。その後も長期にわたり数千トン規模の漁獲量を維持していましたが、2017年度以降は急激な減少に転じた為、稚貝放流や食害防止ネット設置、漁獲規制など様々な資源管理策が講じられたものの効果は限定的であり、2024年度の年間総水揚げはわずか0.1トンにまで落ち込み、事実上アサリ漁は壊滅的状況となっています。 この資源減少と並行して、2018年には伊勢湾台風以来といわれる大型台風24号が浜名湖を直撃し、湖内のアマモ場に壊滅的な被害を与えました。静岡県水産技術研究所浜名湖分場が2000〜2002年に行った調査では、南浜名湖を除外しても727haのアマモ場が確認されていましたが、その大部分が地下茎ごと流出し、奥浜名湖の松見ヶ浦や弁天島周辺を除く多くの海域で群落は消失してしまいました。 アマモ場はアサリをはじめとする水産資源の生息環境を支える基盤であると同時に、二酸化炭素の固定・貯留を担うブルーカーボン生態系として国際的に注目されています。その喪失は地域漁業の衰退に加え、気候変動対策上の損失でもあり、地域全体に深刻な危機感をもたらしました。 こうした背景を受け、2018年度以降、浜名漁協新居支所の有志漁業者が中心となり、SDGsアマモ再生事業部会(メンバー:浜名漁協新居支所有志、県立新居高等学校、聖隷クリストファー中等部、NPO法人浜名湖フォーラム、弁天島観光協会、弁天島遊船組合)を発足させ、アマモ場再生活動が開始され、当初は湖西市内の小規模な自生アマモ場(約45㎡)から採取した苗や種子を用いて湖内の浅瀬で小規模な移植を行うことから始めました。翌年度以降は村櫛支所や舞阪本所の漁業者も加わり、播種・移植の範囲が拡大しました。その結果、活動開始から4年目には再生面積が30haを超え、湖内で十分な種子を確保できるまでに回復しています。その後も技術の蓄積と地域連携の強化により再生速度は加速し、更に3年前から浜名湖内に多く自生するシオグサの基底部を利用する播種方法を新たに導入した結果、アマモ場は更に拡大しています。すなわち、シオグサの上部が夏期に流出し始め、晩秋になると残存した基底部が海底で薄いマット状になり、天然のゾステラマットとしての効果が得ら、ここに種を播種することによってアマモ場の拡大に繋がったものと考えられます。 本プロジェクトの大きな特徴は、科学的根拠に基づく定量調査と、地域社会の総力を結集した活動を両立している点にあります。アマモ場の回復効果を客観的に示すため、大学の研究者と連携し、年毎に発芽成長する耐温暖化を有するアマモの遺伝的な多様性を高めるような種まき方法に加えるとともに、乾燥重量を実測してバイオマスを定量化した他、水中ドローンを活用した広域映像調査を導入し、従来の目視や潜水では困難であったアマモ群落の分布や被度を高精度に把握でき、その科学的裏付けが確立されている点は特筆すべきであり、測定値の信頼性の源泉と言えます。 一方で、本調査を支えているのは、現場で活動する地域漁業者の存在です。漁師は経験を活かして適切な移植地点を選定し、作業に従事するとともに、自らの漁船を提供して活動を支えています。漁協組合員はボランティアとして播種・移植に取り組み、活動の基盤を形成しています。また、小中高の総合学習の一環として子どもたちが参加し、アマモの植え付けや環境学習を通じて環境保全の大切さを学んでいます。さらに企業や自治体も資金的・技術的な支援を行い、産官学民が一体となった協働体制が確立されています。これにより、活動は単なるアマモの回復活動ではなく、地域社会がワンチームとなった持続可能なブルーカーボンプロジェクトへと発展しています。 加えて、干潟環境の改善により、近年は自然発生的にコアマモが繁殖する事例も確認されています。かつて潮干狩り観光により干潟環境が攪乱されていた時期には定着が困難でしたが、アサリ資源の激減に伴い潮干狩りが中止され、土壌基盤が安定化したことでコアマモが出現しました。 漁業者と市民による干潟清掃活動と相まって、アマモとコアマモが共存する多様な植生環境が形成されており、ブルーカーボン生態系としての回復力と多様性が高まっています。 本プロジェクトが有する意義は三点に集約されます。 第一に、消失したアマモ場を対象とした計画的かつ大規模な再生であり、これは里海形成として人為的介入と科学的管理によって実現した成果です。 第二に、漁業資源回復との相乗効果であり、アマモ場の再生はアサリや魚類の生息環境を改善し、地域漁業の再生に直結します。 第三に、地域社会の参画による持続可能な管理体制です。漁業者、教育機関、自治体、企業が一体となった協働体制は、活動の継続性と社会的共感を高める基盤となっています。 これらの取組は、ブルーカーボンクレジット制度における「追加性」「永続性」「透明性」の要件を満たしています。科学的調査に基づく定量データと地域一丸の体制は、信頼性の高いクレジットとして評価されると確信しています。すなわち、気候変動対策と地域貢献を同時に果たす共創型クレジットとして高い価値を有している為、今後は、バイオマス測定や水中ドローン調査を継続し、データの蓄積と公開を通じて、国際的にも認知されるブルーカーボンクレジットを確立していく予定です。 浜名湖におけるアマモ場再生は、漁業資源回復と気候変動対策を両立する先進事例であり、企業の参加によって一層の発展と波及効果が期待できます。
プロジェクト実施開始日 (プロジェクトを始めた日付)
2018年(平成30年)から現在
プロジェクト実施場所
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