プロジェクト詳細

意見公募中
JBC00000098
志津川湾ネイチャーポジティブな養殖とまなびの場創出プロジェクト

志津川湾ブルーカーボン協議会

人工基盤
吸収源の新たな創出
 宮城県北部に位置する南三陸町は、東日本大震災による津波で壊滅的な打撃を被ったが、震災後の各方面からの支援と住民の必死の努力により、自然との共存を目指した新たなまちづくりを進めている。  カキ・ワカメ・ホタテ・ホヤ・ギンザケといった養殖業も復旧が進み、特にカキ養殖では、施設台数をそれまでの1/3まで減らし、1年もの主体の養殖へと改革を成し遂げた戸倉地区の事例は全国的に有名となった。本取り組みは、環境や地域社会に配慮した養殖業者に与えられる国際認証「ASC認証」の日本で初めての取得(2016年3月)にもつながった。  一方で町の人口減少は進み、水産業の担い手不足が懸念されるとともに、海洋の温暖化による生態系の変化や海洋酸性化といった新たな不安材料も加わり、漁業の継続を危ぶむ声があがっている。CO2排出による海洋温暖化・酸性化は、町の経済を支えてきた主力魚種のシロザケの不漁をうみ、町内飲食店の名物であったイクラ丼の提供が中止されるなど、すでに地域の経済にも大きな影響が出ている。  日本の食糧供給基地の一つとしての役割を果たしながら、地域としてもカーボンニュートラル実現に向け、積極的に取り組んでいく必要に迫られている。  南三陸町では、町立自然環境活用センター(南三陸ネイチャーセンター)を中心に、震災前から志津川湾の調査や教育活動に取り組んでおり、その地道な活動は、海藻藻場としては日本初のラムサール条約湿地登録(2018年10月)につながるなど、大きな成果を上げている。  令和4年(2022年)3月には、住民らによる検討会での議論をもとに「志津川湾保全・活用計画」が策定され(南三陸町HPにて公開)、「森里海ひと いのちめぐるまち」という将来像の実現に向けた多くの目標と具体的な取り組みが示された。その中では、湾のなりわいと環境保全、温暖化対策についても言及され、ブルーカーボンによるCO2吸収と排出量抑制を目指すことが明記されている。  これらを踏まえ、南三陸ネイチャーセンターとサスティナビリティセンターは、宮城県漁協志津川支所と連携し、2022年3月より東北大学の協力も得ながら、まずはじめにカキ養殖場の持つCO2吸収能と生物多様性の保全についての具体的な役割の評価に着手した。その後、地元小中学生が調査作業に参加するなど、地域内での展開も図りつつ調査を進めている。  カキやホヤ、ワカメ等の養殖施設には、まとまった量の海藻類がロープ等の着生基盤に生育する事が知られており、その一部は深海底への移送などにより、ブルーカーボンとしての一定の役割を果たしていることが期待される。また、これらの養殖施設は、海面に新たな付着基盤を提供することで、あたかも水中に出現した高層マンションのように、多くの動植物の棲みかとして機能している。近年発達した環境DNA技術は、これまで調査が困難であった、多地点高頻度の生物観測を可能とすることから、こうした技術も取り入れながら、養殖施設によるCO2吸収能と生物多様性の保全機能を明らかにする事を目標に活動を進めてきた。  令和6年(2024年)3月、上記の活動をより効果的・持続的に推進するため、また、より広い活動展開を見据え、漁業関係者、一般企業、一般社団法人・NPO 法人、および行政関係者等によって構成される協議会「志津川湾ブルーカーボン協議会」が設立された。構成団体は以下の通り。 (1) 宮城県漁協志津川支所 (2) 鹿島建設株式会社 (3) MS&ADインシュアランスグループホールディングス株式会社 (4) 一般社団法人 サスティナビリティセンター (5)南三陸町
2011年10月